ゲーム機を構成する3要素は ①コントローラ・②本体・③モニターの3要素ですが、SONYが PlayStation4 でこの内の2つを大きく変えるかもしれません。
初代iPhoneがリリースされた時に感じたのと同じぐらいの、インパクトがあります。
いや、それ長期的に見るとそれ以上の衝撃になるかもしれません。
PlayStation4 が開ける扉 、それはセンス・シンセシス(感覚生成)
PlayStation の生みの親である 久夛良木 さんは PlayStation の開発テーマを単なる 「ゲーム機の開発」 ではなく、 「計算により”世界”を生成するコンピュータの開発」 としました。
実はこのテーマは初代 PlayStation から PlayStation4 まで全くブレていません。
ゲーム機が売れない時代と言われながらも、SONY が実直にゲーム機を作り続けるのはこのテーマがあるからです。
初代PlayStation で目指したのは ”リアルタイム” です。
リアルタイムに動かせる画像を生成することで、そこに ”世界” を作りました。
PlayStation2 で目指したのは”エモーショナル・シンセシス”(感情生成)です。
よりリアルな画像生成を追求することで心すら動かせるように ”世界” をより華やかなものにしました。
PlayStation3 で目指したのは”ワールド・シンセシス”(世界生成)です。
より計算能力を高めることで物理計算をリアルタイムで行い、”世界” をより現実的なものにしました。
PlayStation を 久夛良木さんがどんな思いで作ったのか、その開発秘話などを知るには 美学vs.実利 「チーム久夛良木」対任天堂の総力戦15年史 (講談社BIZ) が面白いです。
この本を読んで ”モノ” を作るということは ”思い” を作ることだと気付きました。
久夛良木さんファン、及び PlayStation の歴史や開発秘話を知りたい人は必読です。
そして PlayStation4 が目指しているのは”センス・シンセシス”(感覚生成)です。
PlayStation3 で ”世界” としての場の生成が可能となりましたが、そこはコントローラとモニターでしかアクセスできない場所でした。
それを PlayStation4 では感覚情報を生成することで ”世界” に入れる(没入)ようにします。
PlatyStation4 を通じてSONYが変革を起こすものは、”モニター” と もしかしたら ”コントローラ” です。
Project Morpheus
モニターについて考えてみるとここ数年、既に新たな試みがゲーム機各社でされています。
例えば Nintendo は Nintendo3DS にて3Dによるゲーム表現を模索しています。
Microsoft は Xbox でプロジェクションマッピングによる視覚表現を模索しています。
ここにきてSONYは Project Morpheus を発表しました。
SONYは既にHMZというヘッドマウントディスプレイを売っています。
でも Project Morpheus はHMZとは根本的に違います。
単に目の前に広がる大きなモニターではなく、モーショントラッキングにより見ている方向に応じた映像を PlayStation4 の計算能力によりリアルタイムに出力できます。
まさに目の前に”新しい世界”を作り出すことができたのです。
また、映像のみならず3D音響もサポートしているので 視覚 だけでなく 聴覚 からも”新しい世界” へと入ることができます。
PlayStation4 の専用品として Project Morpheus を発表したのは PlayStation の開発テーマを SONY が実直に追求した結果だと思います。
Traxison
コントローラについても、各社が様々な試みをしています。
例えば、Nintendo は Wiiリモコンでモーションコントールによる新たなゲームを創造しました。
http://youtu.be/Yha2EmmOdBk
MicrosoftはXboxで Kinect によるジェスチャーコントールで新たなインターフェースの方向性を提案しました。
それでSONYはどうなんでしょうか?
SONYは PlayStation Move でモーションコントロールを実現しています。
ここからは推測ですが、PlayStation Move についても SONY は刷新するのではないかと考えています。
SONY には SONY CSL(Sony Computer Science Laboratories)という研究所があります。
ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)は、純粋にコンピュータサイエンスに関する研究を行う場として1988年2月に設立されました。 当時の設立趣意書には、「来るべき21世紀に照準を合わせた、コンピュータの歴史に残りうる価値を持った独創的な研究を行い、これによって広く社会・産業の発展に貢献するところにあります。」とあり、研究テーマは (1) 分散オペレーティングシステム、(2) コンピュータネットワーク、(3) プログラミング言語、 (4) ヒューマン・コンピュータ・インタラクションなど次世代を担うコンピュータシステムの基礎を担うものが中心でした。
その後、設立趣意の精神を受け継ぎつつ、システム複雑系、脳科学、意識と認知の機構、システム生物学などを研究テーマに加え、相互に影響を与えつつ新たな価値創造に向けて幅広く研究活動を展開しております。
※SONY CSLのホームページより一部引用
まさに次時代のテクノロジーを切り開く研究所です。
このSONY CSLの副所長の 暦本 純一 さんがいます。
彼のプロジェクトの中でも興味深いのが「 Traxion :仮想力覚提示デバイス」です。
”Traxion” はガムの箱程度の手のひらサイズのアクチュエーターユニットで、アクチュエーターの振動波形を制御することで擬似的に ”Traxion” を持っている人に押したり引いたりする ”力” を感じさせるデバイスです。
これは人間の振動刺激とその感覚のズレを利用して擬似的に力を感じさせています。
以下のビデオを見るとかなり小型なのが分かります。
また動く方向を感じているのがわかります。
※子ども向けインタフェースを考える上で必要なこと【連載:五十嵐悠紀】の記事にも ”Traxion” の体験レポートがあります。
このノウハウを活用すれば今のフォースフィードバックコントローラを更に進めた、動きの方向を感じられるコントローラができると思います。
または、データグローブのようなもので触覚を得れるようなコントローラも安く・コンパクトにできるかもしれません。
SONY CSLで研究された成果が製品にフィードバックされることは今までもあったので、”Traxion” を活用したコントローラがでるのも十分あると思います。
まとめ
PlayStation4 は単なるゲーム機ではないですね。
Project Morpheus を見たらすごく PlayStation4 が欲しくなりました!