情報処理技術者試験の「ITサービスマネージャ試験(SM)」に約3ヶ月の勉強で、初回合格しました。
「ITサービスマネージャ試験(SM)」については合格率14.1%と難易度も高いです。かつ午後2については論文試験なので、勉強せずに実務知識だけで合格できる試験ではありません。
戦略的、かつ十分な勉強が必須です。
「ITサービスマネージャ試験(SM)」はある程度の職務経験が必要なため、仕事も忙しい年代がターゲットとなります。
仕事もあり勉強時間の確保が難しい中で、私が実践した「ITサービスマネージャ試験(SM)」のための最短勉強法を記事します。
次回受験される方の参考になれば幸いです。
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ITサービスマネージャ試験(SM)の概要
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最初に「ITサービスマネージャ試験(SM)」が、どのような試験なのか簡単に説明します。
「ITサービスマネージャ試験(SM)」は午前1→午前2→午後1→午後2と全4試験を朝から夕方までの5時間で受験する長丁場な試験です。
回答方式は午前1・2が4択マークシート、午後1が記述回答、午後2が論文となります。
午前1は情報処理技術者としての基本知識を問う問題、午前2・午後1・午後2はITサービスマネージャーの知識を問う問題となります。
試験時間と問題数をざっくりまとめると以下です。
午前1 | 午前2 | 午後1 | 午後2 |
---|---|---|---|
4択:30問 (50分) | 4択:25問 (40分) | 記述式:2問 (90分) | 論述式:1問 (120分) |
合格基準は、各試験区分で60%以上の正答が必要です。つまり全試験区分の合計点ではなく、各試験区分で合格点を取る必要があります。
例えば午前1で合格基準を満たさないと、それ以降の午前2や午後試験で合格点を取っても合格にはなりません。
積上式の試験なので、勉強も午前1〜午後2の全試験区分について満遍なく必要です。
逆にこの試験方式は段階的に合格者をふるい落すため、試験が進むに従い合格人数が減る傾向があります。
試験センターも合格者を一定数確保する必要があるため、午後2の論文試験ではその合格基準が相対的に変動するようです(必要字数未満の論文でも、合格することがあるようです)。なので諦めずに最後まで受験する必要があります。
ITサービスマネージャ試験(SM)の出題傾向と勉強方針
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ITサービスマネージャー試験の各試験区分の出題傾向と勉強方針について記載します。
午前1・午前2の出題傾向と勉強方針
午前問題については、午前1で情報処理技術者としての基礎知識(基本情報処理の午前問題と同等レベル)、午前2でサービスマネージャーとしての基礎知識が問われます。
求められる知識範囲は毎年同じで、過去問から同一問題、または類似問題(他年度の問題内の数値等を変えたものや正解以外の選択肢を回答にしたもの)が複数出題されます。
勉強方針としては過去問を繰り返し解き、設問内容・回答内容の理解と知識定着を図ります。
勉強初期にひと通り問題を解いた上で反復学習に重きを置き、時間をかけて知識定着させます。
午後1の出題傾向と勉強方針
午後1については3問の中から2問選択して回答します。
各問題は4〜6ページにわたる長文に対し、10問前後の設問に記述回答します。各設問には20〜50文字程度の字数指定があります。
知識としては、『サービスマネージャーのあるべき姿』を問われます。
毎回問題シチュエーションが変わるため、多くの問題を解いてサービスマネージャーならどう答えるべきかを感覚的に理解します(回答を覚えるのではなく、ITサービスマネージャーならその場面でどう行動するべきかを理解します)。
逆説的ですが、午後1の勉強のために午後2の勉強をします。
なぜならば、午後1の問題文は午後2の回答論文そのものなので午後2の論文記述を通じて、午後1への回答が感覚的に理解できるからです。
午後2の出題傾向と勉強方針
午後2は、論文です。2問の中から1問を選択して回答します。各問題には3つの設問があります。
各問題にはITサービスマネージャーが遭遇する「キャパシティ管理」や「問題管理」等のテーマが設定され、更に論述すべきことが指定されます。
自分の経験したシステムを題材に、指定されたテーマに沿って論述をします。
3つの設問で問われる内容は大体毎年同じで以下です。
- 設問ア:800字以内
「あなたが携わったシステムの概要 と 指定テーマに則した発生問題について」
- 設問イ:800〜1600字以内
「設問アの問題に対して実施した対策内容と工夫した点」
- 設問ウ:600〜1200字以内
「設問イの実施後に発生した新たな問題、または対策レビュー結果」
論文対策では、
①論文の書き方を理解する
②論文題材をストックする
③長文を短時間で書く練習をする
と多岐に渡る論述スキルが必要です。
習得すべき事が多く、勉強期間も2ヶ月程度必要です。
勉強中期より上述の①〜③を試験当日まで段階的に進めます。
ITサービスマネジャー試験勉強スケジュール
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全体的な勉強スケジュールは、余裕みて4ヶ月、最短で3ヶ月程度必要です。
週あたりの勉強時間想定は、通勤時間の1時間と帰宅後の1時間の計2時間を週3日程度として計6〜8時間確保するのがベストです。
4ヶ月の過ごし方は以下です。
- 1ヶ月目
午前1・2の問題集を解きながら午前知識をひと通り理解します(一部理解不足や苦手分野があっても、まずは全部解きます)。
- 2ヶ月目
午前1・2の過去問を反復して解き、苦手分野の理解を図ります。
同時に午後2論文の ①論文の書き方を理解 して過去問を元に論文を書いてみます。③長文を短時間で書く練習 もします。- 3ヶ月目
継続して午前1・2の過去問を反復して解きます。午後2論文の ②論文題材のストック をします。午後1の過去問を解き、問題に慣れます。
TAC等の予備校が9月初旬に実施する模擬試験は、絶対に受験します。
実試験同様の模擬試験を受けることで時間配分や問題傾向、またこの時点の自分の実力と弱点を把握することができます。
模擬試験で休日が潰れるのは嫌ですが、1日の模擬試験で自分の弱点を把握して合格の可能性が上がるならば安い投資です。
- 4ヶ月目
模擬試験で合格点を取れなかった試験分野を重点的に再勉強します。
ITサービスマネジャー試験勉強方法(午前1・午前2・午後1)
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今までの説明を元にITサービスマネジャー試験勉強の具体的な方法、おすすめの参考書・問題集を記載します。
午前1の勉強法
受験勉強の基本は、まず知識の有無に関係なく直近の過去問を解くことです。
自分の現状の学力と出題傾向を同時に理解できます。
現状の実力と出題傾向がわかったところで問題集を繰り返し解きます。問題集は過去問を元に、回答解説が多岐にわたるものを選びます。
私は「ポケットスタディ 高度試験共通 午前1・2対応」を使いました。
若干発売年数は古いものの、この問題集の良いところは各分野別に問題が分類されているので、自分の試験区分に必要な分野だけを選択して学習できます。
又、設問内の他の回答選択肢の解説、及び類似問題へのリンクも記載されているので知識の水平展開ができます。これは類似問題が頻出する午前問題には最適です。
特に秀逸なのが、巻末付録の問題・回答ダイジェストです。これは過去問の問題・回答キーワードを要約一覧化してあり、出題キーワードに対してどの回答キーワードを選択すればいいか短期間で習得できます。
最初の1ヶ月目でこの問題集を解いた後は、反復回答を繰り返します。何度も間違える問題や理解不十分な問題はマーキングして、個別に勉強できるようにします。
重い問題集を常に携帯するのは難しいので、私は問題集のページをスマホカメラで撮って、通勤時間や空き時間にスマホから問題を解くことで勉強時間を確保しました。
ポケットスタディは品薄なので、最新版の以下もおすすめです(Kindle版があるのが嬉しいポイントです)。
午前2の勉強法
勉強方法、使用する問題集は午前1と同じです。
但し、不明点の理解のためにサービスマネージャー用参考書を一冊用意します。午後2用の体系的な知識習得のためにも活用できます。
この参考書は各ページに出題重要度と理解すべきキーワードが書いてあり、各ページの冒頭部分を読むだけで受験に必要な知識が最短で習得ができます。
午後1の勉強法
残念ながら午後1専用の効果的な勉強法はありません。
前述の通り、午後2の勉強を進めると自然と何を回答したらいいかがわかるようになります。
但し、ひとつだけ練習すべきことがあります。
午後1の問題は長文です。実試験では、問題文を読み返している時間的余裕はありません。
長文を読み慣れて一読で理解する練習が必要です。試験時間と同じ制限時間で過去問を解くことで時間感覚を身に付けます。
複数年度の問題文を読む内に問題文のどこが引用され、何が問われるか分かるようになります。これが分かると長文のどこを重点的に読めばいいのか分かるようになります。
ITサービスマネジャー試験勉強方法(午後2)
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午後2の論文テストについては論文特有の勉強が必要なため、文字数を割いて説明します。
習得すべきスキル別に勉強方法を記載していきます。
論文の書き方を理解する
論文の書き方には実はルールがあります。
午後2の論文試験に合格するには、このルールに沿いながら記載する方法論の理解が必要です。私は論述のルールと方法論をどこから理解すればいいのか困りました。
これを理解するために、「ITサービスマネージャ 合格論文事例集」を使用しました。
この本はプロが過去問を元に執筆した論文集になっています。
論文集でありながら、前段には論文の書き方について細かくルールと方法論が書いてあります。
この前段部分には論文記述の方法論が細かく記載されているので、熟読することで論文の書き方が習得できます。
論文の書き方を理解する近道は、論述ルールを理解した上でプロが書いた論文回答事例をみて全体の組み立てや言い回し(特に論調の進め方)を覚えることです。
この論文集には過去問に則した回答論文が多数収録されているので、受験者が一番悩む「どんな風に論文を書いたらいいか?」を短期間で理解できます。
論文題材のストックする
上述の論文集から論文題材をストックしたいところですが、これはダメです。
同じ問題は出題されませんし、何より自分の経験のないことを2600字矛盾なく引用するのは無理です。
それよりも自分が経験してきたサービスマネジャー業務について、些細なものでもピックアップしてネタ帳を作っておくほうが大事です。
ネタについては立派な経験は必要ありません。
例えば「間違ったプログラムを本番環境にリリースしてしまった」とか、「問い合わせが集中発生して対応遅延した」とか、一般的に起こるようなベタな経験で問題ありません。
ネタ帳の章立てイメージは以下になります。これは午後2の問題形式とも一致させています。
- 問題概要と発生原因は何か?
問題の概要と伴に、発生原因を3つほど箇条書きにします。
- 問題に具体的にどう対処したか?
問題に対してどのように分析し、どのような対処(一次対応)をしたか箇条書きにします。なぜそのように対応したか理由を明記するのが大事です。
- 恒久対策としてどんな取り組みをしたか?
再発防止策としてどのような恒久対策をしたか、理由と伴に明記します。
- 恒久対策により新たに健在化した課題、また対策への評価はどうだったか?
恒久対策による効果、また新たに顕在化した問題(課題)について箇条書きにします。
ベタなネタでもそれぞれのプロジェクトや顧客やシステムが違えば内容はオリジナルのネタになります。
ネタ帳繰り返し眺めて、章立てと内容を覚えます。
このネタ帳と全く同じ問題がでることはないですが、改変・引用することで様々なシチュエーションへ応用できます。
長文を短時間で書く練習をする
短時間で書く練習とは、文字を早く書く練習ではありません。
午後2の論文で書く文字数の内訳は以下です。論文集を元に私が作った論文目次テンプレートをベースに記載しています。
最大文字数は3,800文字、最低文字数は2,200文字となっています。
説得力のある論述をするには、原因や対策について3つ程度根拠の提示が必要であり、これらを盛り込むと2,800文字前後の文字数が必要です(合格には最大制限文字数の70%前後の記述量が必要と、通例的にも言われています)。
又、午後2の時間配分は以下となります。
前半30分は問題理解と目次作成に使い、残り90分(5,400秒)を論述に使います。
5,400秒÷2,800文字=約2秒、つまり2秒に一文字書く計算です。一見、余裕でクリアできそうな時間に見えます。
しかし、試験時には2秒に1文字は書けません。なぜならば「考えながら書く」からです。
考えながら書く場合、執筆スピードは極端に落ちます。
つまり書くスピードを上げるには、事前に書くことを決め、考えずに書けるようにする必要があります。
具体策としては、書く前に論文の章立てと各章の内容を決めます。
事前に章立てを作る具体的な方法を記載します。
①問題文の中で論文内で触れる必要がある部分をマーキングします。
問題文に記載されている内容に100%関連させる必要はありませんが、8割は関連させる必要があります。
②設問内で論文の大項目・中項目とすべき部分をマーキングして目次に使用します。
※以下は平成28年度秋期問題より引用
③目次テンプレートに記載内容の概略を記載します。
上記でマーキングした大項目・中項目を目次テンプレートに落とし込みます。
ここで注意する点は例えば原因と対策など対になるものは、その内容が矛盾しないようにすることです。
通常、対策は原因の裏返しなので各目次の内容矛盾がないようにします。又、システムの概要と問題についても矛盾がないようにします(システム使用者数が少ない非クリティカルなシステムなのに、システム復旧は数時間以内でする必要がある など)。
目次テンプレートに実際に上記問題を元に記載した例示は以下となります。
必ず何について論述するのか記載しておきます。
重要なので再度書きますが、必ず論述前に目次は作成してください。目次なきまま記載すると必ず途中で矛盾が生じます。
矛盾なく論文を書く方法としてもうひとつ工夫があります。
ずばり!、論文は設問2から書き始めます。
設問1は「あなたが関わったシステムの概要」説明のため、事前に書くことを用意できます。
また、システムの概要説明で触れた内容を設問2・3に含めることで論理性が高まります(例えば、「クリティカルなシステム → だからシステム普及を急ぐ必要がある!」など)。
設問1から記述してしまうと設問2・3を書いている時に触れたくなったことを再度修正・追記する必要があります。
これを避けるために記述量の多い、設問2・3を記載してから書きます。また、時間のかかる設問2・3を書き上げまでしまうことで精神的にも楽になる副次的効果もあります。